クリニックの有給休暇、なぜ取れない? スタッフ不足の悪循環を断ち切るには

有給休暇、それは働く人の権利であり、心身の健康を守る命綱
「有給休暇、取りたいけど、人手不足で言えない…」「申請しても、結局『みんなで回そう』ってなるんだよね…」
クリニックで働く皆さん、こんな悩みを抱えていませんか?有給休暇は、法律で定められた働く人の権利です。
心身をリフレッシュし、仕事のパフォーマンスを維持するためには、不可欠なもの。
しかし、多くのクリニックでは「スタッフが足りない」という理由で、なかなか自由に有給が取れないのが現実です。 今回は、この根深い「スタッフ不足と有給休暇問題」に焦点を当て、その悪循環を断ち切り、誰もが気持ちよく有給を取れるクリニックにするための具体的な方法を提案します。
知ってた?「パート」にも有給休暇は付与される!
「うちは正社員が少ないから有給が取りにくいのは仕方ない」と思っていませんか?
もしかしたら、その認識自体が有給取得を阻む原因になっているかもしれません。
労働基準法では、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトにも有給休暇の付与が義務付けられています。
付与の条件
●雇い入れの日から6ヶ月以上継続して勤務していること。
●その期間の全労働日の8割以上出勤していること。
この2つの条件を満たせば、週の労働時間や日数に応じて有給休暇が付与されます。
例えば、週3日勤務のパートスタッフでも、条件を満たせば有給休暇が発生するのです。
「パートだから有給は関係ない」という誤解が広まっていると、クリニック全体の有給取得率が低迷し、結果的に正社員の負担も増えるという悪循環につながりかねません。
すべての雇用形態のスタッフが自身の権利を理解し、適切に取得できる環境を整えることが、クリニックの健全な運営には不可欠です。
参考資料:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「働き方改革関連法解説(労働基準法/年5日の年次有給休暇の確実な取得関係)」
なぜ有給休暇が取れない? クリニックの「人手不足」が招く悪循環

有給が取れない根本原因は、もちろん「スタッフ不足」にあります。
しかし、この「スタッフ不足」自体が、有給が取れない状況をさらに悪化させる悪循環を生み出していることに気づいていますか?
「私が休んだら、誰がやるの?」という罪悪感
スタッフが少ないと、一人ひとりの業務負担が大きくなります。
そんな状況で「私が休んだら、他の人に迷惑がかかる」という罪悪感が生まれ、有給申請をためらうようになります。
あるある体験談
「インフルエンザで高熱が出た時も、『申し訳ない』って気持ちが先に立って。
結局、無理して出勤しちゃったことあります。
だって、休んだら誰が診察室回すのって…」
「休めないから辞める」負のスパイラル
有給が自由に取れない、常に忙しい、といった状況が続くと、スタッフの不満は募り、離職につながります。
人が辞めれば、さらにスタッフ不足が深刻化し、残ったスタッフの負担が増えるという悪循環に陥ります。
「新しい人、育てる余裕ない」というジレンマ
スタッフが少ないと、日々の業務で手一杯になり、新しいスタッフを丁寧に教育する時間も余裕もなくなります。
これにより、せっかく採用した新人が定着せず、いつまで経っても人員が安定しないという問題が発生します。
院長の「人件費を抑えたい」という本音
クリニック経営において人件費は大きな割合を占めます。
院長としては、コストを抑えたい気持ちがあるのは当然です。
しかし、そのためにギリギリの人数でクリニックを回そうとすると、有給休暇の取得が困難になり、結果的にスタッフの離職や生産性の低下を招くことになります。
あなたの有給休暇を取り戻す! 状況を改善するための具体的なステップ
この悪循環を断ち切るためには、スタッフ個人とクリニック全体の双方からのアプローチが必要です。
スタッフ側からできること

「有給休暇は権利」という意識を持つ
まずは、有給休暇は労働基準法で定められた権利であり、誰にも遠慮することなく取得できるものだという意識を強く持ちましょう。
取得することは「迷惑をかけること」ではありません。
早めの申請と柔軟な協力姿勢
休みたい日が決まっているなら、できるだけ早く申請しましょう。
そして、自分が休む代わりに誰かに協力してもらう場合、その人が休む時に今度は自分が協力するなど、持ちつ持たれつの関係を築く意識が大切です。
業務の「見える化」と「標準化」を提案する
「私しかできない仕事」を減らすことが、有給取得の第一歩です。
自分の業務内容を文書化したり、マニュアルを作成したりして、誰でも対応できるようにする提案をしてみましょう。
あるある体験談
「自分の業務を細かく書き出してマニュアル化したら、意外と誰でもできることだったって気づいたんです。そしたら、他のスタッフも『これなら私でもできるね』って言ってくれて、少し気が楽になりました」
院長や上司への「相談」という形で切り出す
いきなり「有給取ります!」ではなく、「〇日に有給をいただきたいのですが、どうしたら業務に支障が出ませんか?」と、院長や上司に相談する形で切り出すと、建設的な話し合いにつながりやすいです。
クリニック全体で取り組むべきこと(院長・管理者向け)

有給休暇取得状況の「見える化」と目標設定
誰が、いつ、どれくらい有給を取っているか、クリニック全体で把握し、掲示するなどして「見える化」します。
そして、「今期の有給消化率〇〇%を目指す」といった目標を設定し、積極的に取得を促しましょう。
業務フローの見直しと効率化・マニュアル化
各スタッフの業務内容を洗い出し、無駄な作業がないか、自動化できる部分はないか検討しましょう。
紙媒体での管理が多い場合は、電子カルテや予約システム、自動精算機の導入など、医療DXを積極的に進めることが重要です。
マニュアルを整備し、誰が休んでも業務が回る体制を築きます。
成功事例
「最初はみんな嫌がったけど、予約システムと自動精算機を導入したら、受付業務が格段に減って、みんなで協力すれば有給を取れるようになった。患者さんの待ち時間も減って一石二鳥でした!」
属人化からマルチスキル化へ
ある特定の業務を一人で行うスタッフがいると、その人が休んだ際に業務が滞ります。
日頃から、複数のスタッフが様々な業務に対応できるよう、OJTや勉強会などを通じて教育を進めましょう。
余裕を持った人員配置の検討
理想は、ギリギリの人員ではなく、少し余裕を持った人員配置をすることです。
短期的な人件費増に見えても、長期的に見ればスタッフの定着率向上、生産性向上、採用コスト削減につながります。
コミュニケーションの活性化とチームワークの醸成
スタッフ間のコミュニケーションが円滑であれば、互いに協力し合い、有給取得に対する理解も深まります。
定期的なミーティングや面談の場を設け、不満や改善提案を吸い上げる機会を作りましょう。
外部サービスや人材の活用
緊急時や繁忙期に備えて、派遣スタッフやスポットのフリーランス看護師・事務員などの活用も検討してみましょう。
まとめ
有給は「贅沢」ではない。スタッフが輝くクリニックへ

有給休暇が取れない問題は、スタッフ個人の問題ではなく、クリニック全体で取り組むべき経営課題です。
有給をしっかりと取得できる環境は、スタッフの心身の健康を守り、モチベーションを高め、結果としてクリニックの医療サービスの質向上にもつながります。
「スタッフが足りないから…」という悪循環を断ち切り、誰もが気持ちよく働き、プライベートも充実させられるクリニックを目指しましょう。
あなたのクリニックで働く皆さんが、心から「この職場で良かった」と思える日が来ることを願っています。
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