地域とともに”女性のライフプラン”を支える医療を-山下衣里子医師

目次

地域とともに”女性のライフプラン”を支える医療を-山下衣里子医師

― 天の川レディースクリニック 山下衣里子医師インタビュー ―

不妊治療・思春期外来・性教育まで幅広く関わる女性医師の想いに迫る。

はじめに

「思い通りにいかないこともたくさんある人生の中で、少しでもストレスレスで思い描いた人生設計を叶える
お手伝いをしたい」
そう語るのは、天の川レディースクリニックで診療に携わる山下衣里子医師です。

「思い通りにいかないこともたくさんある人生の中で、少しでもストレスレスで思い描いた人生設計を叶えるお手伝いをしたい」。
そう語るのは、天の川レディースクリニックで診療に携わる山下衣里子医師です。

産婦人科医として不妊治療に携わる一方で、思春期外来の立ち上げや中学・高校での性教育講師としても活動
される山下先生。
女性の一生を見据えた医療への想いと、地域に根ざした取り組みについてお話を伺いました。

産婦人科医として不妊治療に携わる一方で、思春期外来の立ち上げや中学・高校での性教育講師としても活動される山下先生。
女性の一生を見据えた医療への想いと、地域に根ざした取り組みについてお話を伺いました。

1.医師を志したきっかけと専門領域への道のり

敷かれたレールから見つけた使命

「正直なところ医師を目指したのは親が医者だったからです。敷かれたレールに乗った感が否めません」と
率直に語る山下先生。
しかし、その後の経験が彼女の医師人生を大きく変えることになります。

正直なところ医師を目指したのは親が医者だったからです。敷かれたレールに乗った感が否めません」と 率直に語る山下先生。
しかし、その後の経験が彼女の医師人生を大きく変えることになります。

高校時代、苦手だった物理が塾の先生との出会いで大好きになった経験から「私もこんな大きな転機の一歩に関わりたい」と物理教師を志すように。

高校時代、苦手だった物理が塾の先生との出会いで大好きになった経験から「私もこんな大きな転機の一歩に関わりたい」と物理教師を志すように。

最終的に医学部を選択したものの、大学時代は「髪は金髪、授業はさぼりまくり」という学生生活を送って
いました。

最終的に医学部を選択したものの、大学時代は「髪は金髪、授業はさぼりまくり」という学生生活を送っていました。

臨床現場で受けた”脳天を勝ち割られる衝撃”

転機は大学5回生の臨床実習でした。
「患者さんにとっては医学生も、新米医師も、ベテラン医師も関係なく、病気でしんどい極限の時に相談に
くる場所。そんなところでお気楽な気持ちでいてはいけない」

転機は大学5回生の臨床実習でした。
「患者さんにとっては医学生も、新米医師も、ベテラン医師も関係なく、病気でしんどい極限の時に相談にくる場所。そんなところでお気楽な気持ちでいてはいけない」

この当たり前の真実に気づいた山下先生は、180度打って変わって真面目に取り組むようになります。

この当たり前の真実に気づいた山下先生は、180度打って変わって真面目に取り組むようになります。

産婦人科への道 〜究極の裏方として〜

実習でお産に関わった際、「頑張るのはお母さんと赤ちゃんとそのご家族。医師含めスタッフはただその
お産がいいものとなるべくアシストする縁の下の力持ち的な役割」という現場に感動。

実習でお産に関わった際、「頑張るのはお母さんと赤ちゃんとそのご家族。医師含めスタッフはただそのお産がいいものとなるべくアシストする縁の下の力持ち的な役割」という現場に感動。

「医者が前面に出るのではなく、私も全力でこの命がけの場所を支える究極の裏方に回りたい」と産婦人科
への道を決めました。

「医者が前面に出るのではなく、私も全力でこの命がけの場所を支える究極の裏方に回りたい」と産婦人科 への道を決めました。

2.思春期外来立ち上げの背景と想い

娘の初潮から見えた現実

お産に没頭すること十数年。プライベートでご自身の娘さんが初潮を迎え、生理痛や不正出血で悩む姿を目の当たりにした経験が、新たな取り組みのきっかけとなりました。

お産に没頭すること十数年。プライベートでご自身の娘さんが初潮を迎え、生理痛や不正出血で悩む姿を
目の当たりにした経験が、新たな取り組みのきっかけとなりました。

「私は産婦人科医だから娘にアドバイスできるけれども、世のお母さんたちはこんな時、どの科に行ったら
いいのか?
小児科?、内科?、産婦人科?、産婦人科ならば女医がいる病院で評判のいいところを探さないと
ときっと思う」

「私は産婦人科医だから娘にアドバイスできるけれども、世のお母さんたちはこんな時、どの科に行ったらいいのか?
小児科?、内科?、産婦人科?、産婦人科ならば女医がいる病院で評判のいいところを探さないとときっと思う」

駆け込み寺のような外来を目指して

産婦人科受診のハードルの高さを実感した山下先生は、「産婦人科受診をするというハードルがものすごく
高い世代の駆け込み寺のような外来をしたい」と現在の思春期外来を立ち上げました。

産婦人科受診のハードルの高さを実感した山下先生は、「産婦人科受診をするというハードルがものすごく高い世代の駆け込み寺のような外来をしたい」と現在の思春期外来を立ち上げました。

「産婦人科って妊娠のときに行く科じゃないの?というイメージがあるので、なるべくたくさんの生理に
まつわる不安やつらさを抱えている若年世代に、産婦人科ってこんな気軽に来てもいいんだよという
きっかけつくりをしたくて性教育を始めるようになりました」

「産婦人科って妊娠のときに行く科じゃないの?というイメージがあるので、なるべくたくさんの生理に まつわる不安やつらさを抱えている若年世代に、産婦人科ってこんな気軽に来てもいいんだよという きっかけつくりをしたくて性教育を始めるようになりました」

3.天の川レディースクリニックの理念と特色

患者さんに寄り添う不妊専門クリニック

「みなさん、妊活に関わらず日々色んなことに先がわからない不安を抱えておられると思います。
そして、思い通りにいかないこともまたたくさんあると思います」

「みなさん、妊活に関わらず日々色んなことに先がわからない不安を抱えておられると思います。
そして、思い通りにいかないこともまたたくさんあると思います」

天の川レディースクリニックは、そんな患者さんに寄り添い、少しでもストレスレスで思い描いた
人生設計を叶えるお手伝いを理念とする不妊専門クリニックです。

天の川レディースクリニックは、そんな患者さんに寄り添い、少しでもストレスレスで思い描いた
人生設計を叶えるお手伝いを理念とする不妊専門クリニックです。

プレコンセプションケアへの取り組み

「妊娠を考えた段階では残念ながら介入するに限界があることもあり、もっと前の世代から(妊娠すら
考えてなかった世代から)介入することで変わる未来はきっとある」

「妊娠を考えた段階では残念ながら介入するに限界があることもあり、もっと前の世代から(妊娠すら考えてなかった世代から)介入することで変わる未来はきっとある」

山下先生の「女性の一生を応援するプレコンセプションケア(妊娠前からのケア)を高い専門知識をもって介入したい」という希望に理事長が共感し、現在の思春期外来が実現しました。

山下先生の「女性の一生を応援するプレコンセプションケア(妊娠前からのケア)を高い専門知識をもって介入したい」という希望に理事長が共感し、現在の思春期外来が実現しました。

クリニックならではの強み

一般的な婦人科との違いについて、山下先生は次のように語ります。

一般的な婦人科との違いについて、山下先生は次のように語ります。

「中学校や高校に毎年多く講演に行かせていただいている分、生の現行の思春期世代のトラブルや現状を
把握でき対応できること、また不妊専門クリニックが母体なので、現在の目先の治療だけではなく、その
先の未来まで責任もって治療する、できる知識と設備があることが一番の強みだと思います」

「中学校や高校に毎年多く講演に行かせていただいている分、生の現行の思春期世代のトラブルや現状を 把握でき対応できること、また不妊専門クリニックが母体なので、現在の目先の治療だけではなく、その 先の未来まで責任もって治療する、できる知識と設備があることが一番の強みだと思います」

4.性教育講師としての活動

口コミで広がった講演活動

現在、枚方市のほぼすべてに近い公立中学校で講演を行っている山下先生。きっかけは患者さんである養護教諭の先生からの依頼でした。
その後は、口コミと養護教諭の先生方の連携で活動が広がっています。

現在、枚方市のほぼすべてに近い公立中学校で講演を行っている山下先生。きっかけは患者さんである養護教諭の先生からの依頼でした。
その後は、口コミと養護教諭の先生方の連携で活動が広がっています。

左の写真は、保護者向けの性教育を主催された方から、個別に親子対象の性教育をクリニックのカフェで開催した際の様子です。
ご希望があれば、対応しますと山下先生。

左の写真は、保護者向けの性教育を主催された方から、個別に親子対象の性教育をクリニックのカフェで開催した際の様子です。
ご希望があれば、対応しますと山下先生。

“やらかしたときどうするか”という視点

性教育に対する山下先生の考え方は独特です。

性教育に対する山下先生の考え方は独特です。

「誤解されがちですが性教育は失敗しないための知識の伝授ではないと思っています。
人は生きていれば何かしらやらかす生き物であり、たとえ自身がしっかりしていても時には周りに
巻き込まれてしまうこともあります。
大事なのはその時どうするか。やらかさないようどうするかではなく、やらかしたときどうするか
という引き出しを1つでも多く持ってほしいという思いを常に持って講演しています」

「誤解されがちですが性教育は失敗しないための知識の伝授ではないと思っています。
人は生きていれば何かしらやらかす生き物であり、たとえ自身がしっかりしていても時には周りに 巻き込まれてしまうこともあります。
大事なのはその時どうするか。やらかさないようどうするかではなく、やらかしたときどうするか という引き出しを1つでも多く持ってほしいという思いを常に持って講演しています」

さまざまな講演・研修への対応

地元の救急隊員へ分娩介助を指導(NCPR)

製薬会社の新入社員研修

5.思春期外来での患者対応

本人主体の治療方針選択を重視

思春期外来では未成年の患者さんが母親と来院することが多いですが、山下先生は患者さん本人への説明を
重視しています。

思春期外来では未成年の患者さんが母親と来院することが多いですが、山下先生は患者さん本人への説明を重視しています。

「基本的には患者さんご本人に説明し、自身のことなので、親御さま任せではなく、自分で自分の現状を
理解してもらい、治療方針を選択してもらうよう繰り返し繰り返しアプローチしています」

「基本的には患者さんご本人に説明し、自身のことなので、親御さま任せではなく、自分で自分の現状を 理解してもらい、治療方針を選択してもらうよう繰り返し繰り返しアプローチしています」

6.働く女性へのメッセージ

すべてのライフスタイルを尊重

「結婚しているしていない、子供がいるいない、仕事をバリバリしている、家族のためにとセーブしている含め
個々の人生なので、どのライフスタイルも考え方も、正解も間違いもないと思っていますし尊重しています」

「結婚しているしていない、子供がいるいない、仕事をバリバリしている、家族のためにとセーブしている含め 個々の人生なので、どのライフスタイルも考え方も、正解も間違いもないと思っていますし尊重しています」

医療面からの全力サポート

「こんなライフプランを描いていたのにそれが叶わない、どうしたらいいか?
と産婦人科の扉をたたいてきてくださった方には、その方が思い描くライフプランになるべく近づけるよう
医療面からの全力でのサポートをしたいと思っています」

「こんなライフプランを描いていたのにそれが叶わない、どうしたらいいか?
と産婦人科の扉をたたいてきてくださった方には、その方が思い描くライフプランになるべく近づけるよう 医療面からの全力でのサポートをしたいと思っています」

7.地域医療への想いと今後の展望

社会全体の理解が必要

「患者さんご本人だけではなく、家族も職場も環境も理解する社会でないとだめだと思っています」
山下先生は、個人の治療だけでなく、社会全体の理解向上の必要性を強調します。

「患者さんご本人だけではなく、家族も職場も環境も理解する社会でないとだめだと思っています」
山下先生は、個人の治療だけでなく、社会全体の理解向上の必要性を強調します。

「例えば性教育においては本人が講演を聞いて受診したいと思っても、ご家族がその年で産婦人科受診なんて、、、
と反対され受診できていないことも本当にたくさんあります」

「例えば性教育においては本人が講演を聞いて受診したいと思っても、ご家族がその年で産婦人科受診なんて、、、
と反対され受診できていないことも本当にたくさんあります」

より幅広い市民公開講座の実現を

「市民公開講座もご依頼いただき、講演していますが、もっとたくさんの年齢層、内容で開催できればいいな
と思っています」

「市民公開講座もご依頼いただき、講演していますが、もっとたくさんの年齢層、内容で開催できればいいなと思っています」

おわりに

山下衣里子医師の取り組みは、従来の産婦人科診療の枠を超えて、女性の一生を見据えた包括的なケアを地域に根ざして提供するものです。

山下衣里子医師の取り組みは、従来の産婦人科診療の枠を超えて、女性の一生を見据えた包括的なケアを地域に根ざして提供するものです。

思春期から妊娠、出産、そしてその先まで——
女性の人生のあらゆる段階で「思い描いたライフプランの実現」をサポートする医療の形が、ここにあります。

思春期から妊娠、出産、そしてその先まで——
女性の人生のあらゆる段階で「思い描いたライフプランの実現」をサポートする医療の形が、ここにあります。

「やらかしたときどうするか」という現実的な視点と、「究極の裏方」として患者さんを支える姿勢。
山下先生の取り組みは、これからの地域医療のあり方を示す貴重な実践例と言えるでしょう。

「やらかしたときどうするか」という現実的な視点と、「究極の裏方」として患者さんを支える姿勢。
山下先生の取り組みは、これからの地域医療のあり方を示す貴重な実践例と言えるでしょう。

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